Columnコラム

EUのPIF・CPSRは台湾PIFに使える?
ASEAN・中国の資料との違い

EUのCPSRに含まれる処方、安定性、微生物、毒性、暴露量などのデータの多くは、台湾PIFの資料として活用できます。ASEANのPIFや中国の安全性評価報告書も同様です。ただし、台湾PIFの第16項「製品安全資料」は、台湾の法令上の資格を持つ安全性評価者が台湾の規制に照らして評価し、署名するものです。海外の報告書をそのまま転用することはできません。

化粧品のPIF制度は台湾だけではありません

PIF(Product Information File)の仕組みは、EUの化粧品規則とASEAN化粧品指令にもあり、中国では注册(登録)・备案(届出)の前に安全性評価が義務づけられています。一方、日本の薬機法と化粧品基準には、安全性資料の項目や書式を定め、資格者の署名を求める規定は見当たりません。

台湾のPIFは「化粧品產品資訊檔案管理辦法」第3条の16項目で構成され、中国語または英語で作成し、台湾の輸入業者が保管します(第8条)。全体像は台湾PIFガイドをご覧ください。

地域制度主な書類台湾PIFに使えるもの不足しがちなもの
EU化粧品規則(EC)No 1223/2009。域内の責任者がPIFを保管し、CPSRを含むPIF、CPSR(Part A・Part B)Part Aのデータの大部分、製造方法とGMP宣言、効能の根拠台湾の製品登録証明、中国語表示、台湾の微生物5項目との照合、英語以外の資料の訳文
ASEANASEAN化粧品指令第8条。販売者が製品情報を保管ASEAN PIF(ガイドラインは4部構成を推奨)、安全性評価処方、原料・製品の規格、GMP、安定性、安全性評価、効能の根拠書式や詳しさが会社により異なる。防腐効力試験はガイドライン上は補足資料
中国化粧品監督管理条例。特殊化粧品は注册、普通化粧品は备案。その前に安全性評価製品安全性評価報告書(完全版・簡略版)、検査報告書処方、成分ごとの評価、理化学・微生物などの試験と評価の結論2025年5月より前の届出分は簡略版の場合あり。台湾の成分規制との照合
日本(参考)薬機法。製造販売業許可、品目ごとの製造販売届、化粧品基準定まった書式なし。試験成績書、規格書、SDS、各種試験報告書規格、安定性・微生物・防腐効力の試験報告書、原料の資料安全性評価のとりまとめ、毒性データの整理、台湾の微生物5項目との照合
各地域の法令と当局の公表資料をもとに当事務所で整理したもの(2026年10月時点)。「使えるもの」「不足しがちなもの」は実務上の目安です。

表は横にスクロールできます。

EUのCPSRは台湾PIFのどの項目に使えるか

EUの化粧品規則では、域内の責任者(Responsible Person)がPIFを備え、最後のロットの上市から10年間保管します(第11条)。PIFの中心となるCPSR(化粧品製品安全性報告書)は、附属書IによりPart A(安全性情報)とPart B(安全性評価)で構成されます(第10条)。台湾PIFとの対応は次のとおりです。

CPSR・EUのPIFの内容台湾PIF
Part A-1 定量的・定性的組成第3項(全成分と配合量)
Part A-2 物理化学的性質・安定性第9項、第11項
Part A-3 微生物学的品質・防腐効力試験の結果第12項、第13項
Part A-4 不純物・包装材料の情報第9項、第15項
Part A-5・6 通常の使用・製品への暴露第7項
Part A-7・8 成分への暴露・毒性プロファイル第10項
Part A-9 有害事象第8項
Part B 評価の結論・警告表示・根拠第16項の参考資料(評価は台湾向けに行う)
PIFの製品説明、製造方法とGMP宣言、効能の根拠第1項、第5項、第6項、第14項
該当なし第2項(製品登録証明)、第4項(台湾での表示)

EUのPIFは、加盟国の当局が容易に理解できる言語で用意すればよく(第11条第3項)、英語とは限りません。ドイツ語やフランス語の資料には、中国語か英語の訳文が必要です。

ASEAN(ベトナム・タイなど)のPIFをお持ちの場合

ベトナム、タイ、マレーシアなどASEAN10か国はASEAN化粧品指令で化粧品を管理しています。指令第8条は販売者に、組成、原料と製品の規格、ASEAN GMPに沿った製造方法、安全性評価、有害事象のデータ、効能の根拠を、表示した住所で当局が確認できるようにしておくことを求めています。

ASEANのPIFガイドラインは4部構成を推奨していますが、法的文書ではなく遵守は義務ではないとしています。そのため書式や詳しさは会社ごとに異なり、防腐効力試験も補足資料の扱いです。現地語の資料には中国語か英語の訳文が必要です。

中国の安全性評価報告書をお持ちの場合

中国の「化粧品監督管理条例」(2021年施行)では、染毛、パーマ、シミ・美白、日焼け止めなどの特殊化粧品は注册(登録)、それ以外の普通化粧品は备案(届出)の対象で、その前に安全性評価を行い、評価資料を提出します(第16・17・19・21条)。NMPAの「化粧品安全評価技術導則(2021年版)」は、報告書に処方、成分ごとの評価、結論、評価者の署名と経歴を含めるよう定めています。

処方と成分ごとの評価がまとまっており、第3項・第10項の整理に役立ちます。ただし2025年5月1日より前は簡略版の提出が認められていたため、手元の報告書が簡略版のこともあります。評価の基準は中国の「化粧品安全技術規範」なので、台湾の成分規制との照合は別に必要です。

台湾向けに追加・やり直しが必要なこと

  • 第2項(製品登録証明)と第4項(中国語表示):台湾の輸入業者が用意します。
  • 第16項の安全性評価:安全性評価者が署名し日付を記載する、安全性評価の結論と推奨事項です(管理辦法第3条)。海外の報告書の署名を差し替えるのではなく、台湾の規制、表示、使用方法にもとづいて評価をまとめ直します。
  • 台湾の禁止・制限成分:「化粧品衛生安全管理法」第6条にもとづく台湾の公告と成分ごとに照合します。EUや中国の規定への適合で代えることはできません。
  • 微生物試験の5項目:台湾の「化粧品微生物容許量基準表」の5項目がそろっているかを確認します(16項目と必要書類)。
  • 処方の同一性:EU向けと台湾向けで処方や容器が異なる場合は、その差を評価します。
  • 第11〜13項を省略する場合:安全性評価者が理由を第16項に記載する必要があります(第3条第5項)。

一方で、評価の考え方は共通しています。TFDAの製作指引は、暴露量の計算にEUのSCCSのガイダンス(Notes of Guidance)を参照しており、CPSRの暴露量や安全マージン(MoS)の計算は、台湾での評価の根拠として活用できます。

日本国内向けの資料しかない場合

日本では、製造販売業許可(薬機法第12条)、品目ごとの製造販売届(第14条の9)、化粧品基準への適合が求められます。2000年の厚生省通知(医薬発第990号)は、化粧品基準に違反しない成分は企業責任で安全性を確認して配合でき、安全性に関する資料は事業者が収集・作成・保管するよう求めていますが、CPSRのような書式は定められていません。

そのため日本国内向けの製品では、試験成績書、規格書、SDS、各種試験報告書はあっても、安全性評価としてのとりまとめはないことが多くあります。この場合、第10項(毒性データ)と第16項は安全性評価者が文献とデータベースから作成します。日本の試験データが使えるかは日本の試験データは台湾PIFに使える?、必要書類は16項目と必要書類をご覧ください。

まとめ

EUのCPSR、ASEANのPIF、中国の安全性評価報告書は、台湾PIFの多くの項目に活用できます。台湾向けに必要なのは、製品登録証明と中国語表示、台湾の成分規制と微生物基準との照合、そして安全性評価者による第16項の評価と署名です。資料の一覧があれば、使える部分と追加が必要な部分を最初に整理できます。

出典

本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の案件に対する法的助言ではありません。各地域の法令は改正されることがあります。

EU・ASEAN・中国向けの資料が、台湾でどこまで使えるか確認します

CPSRや安全性評価報告書、試験報告書の一覧をお送りいただければ、台湾PIFの16項目と照らし合わせ、そのまま使える部分と追加が必要な部分をお伝えします。